いまさら聞けないメタバースの基礎知識ーVRとの違い、注目される理由、期待できる効果

2023.09.05
いまさら聞けないメタバースの基礎知識ーVRとの違い、注目される理由、期待できる効果

仕事をしている中で、近年「メタバース」という言葉を聞く機会が増えてきているのではないでしょうか?

メタバースは仮想空間、仮想現実などと訳され、コンピュータやインターネット上で提供されるもうひとつの世界、およびそこで提供されるサービスのことを指します。これまでは、主にゲームとして活用されてきたメタバースですが、新型コロナウイルスの感染拡大によりテレワークが普及したことで、ビジネスシーンにおいてもメタバースを活用したサービスが増えてきており、年々注目度がアップしています。
今回は、メタバースとはどういうものかについてお話します。

メタバースとは

メタバースの語源は、超越した様子を意味する「メタ(meta)」と宇宙を意味する「ユニバース(universe)」を組み合わせた造語で、1992年に発行されたニール・スティーブンソンのSF小説『スノウ・クラッシュ』の世界から名づけられました。

メタバースの空間はコンピュータ・グラフィックス(CG)で表現された仮想空間です。そのため、現実とはかけ離れた世界を構築することはもちろん、インターネット上の世界で、現実のような敷地の制限なく理論上どこまでも大きな空間を作ることも可能となります。

仮想空間の中で「アバター」と呼ばれる、インターネット上での自分の分身で世界に入り、遊んだり、会話をしたり、お買い物をしたり、誰かとコミュニケーションをとることができる場所がメタバースです。

実はメタバースは、2000年代初めからすでに存在し、2003年にアメリカの会社がリリースした「Second Life」はメタバースの先駆けとしてインターネット上でのコミュニケーションや売買取引が行われ、日本でも2006年ごろにブームとなりました。
私も当時、ハマったものです。

VRとメタバースの違い

メタバースは「VR(バーチャル・リアリティ)」と混同されがちですが別物です。
メタバースが「三次元の仮想空間」を指すのに対して、VRは「仮想空間を体験するための技術やデバイス」を指します。つまり、メタバースが「空間」で、VRは仮想空間にリアリティや没入感を与えるための「手段」となります。

メタバースは、リアルタイムで変化し、独自のルールや経済圏を持つことができます。さらに、ユーザーが自分のアイデンティティを持ち、社会交流ができる場所であり、個人的な体験だけでなく、広い社会的なコミュニティーの中での活動も可能にします。

一方でVRは、主に個人的な体験に焦点を当てており、現実世界から完全に分離された仮想空間を作り出すことによって、ユーザーに新しい体験を提供します。
メタバースとVRは、両方とも素晴らしい技術であり、それぞれの特徴や用途を理解することが重要です。

メタバースが注目を浴びている理由

メタバースが注目を集めている理由として、主に3つが挙げられます。

●VR技術の発展・進化
●新しいコミュニケーションとしての可能性
●NFTとの親和性の高さ

VR技術の発展・進化

初期のVRゴーグルは非常に重く、3次元空間の表現もそれほどレベルの高いものではありませんでした。しかし、最近はゴーグルが軽量化されたのはもちろんのこと、ワイヤレス化するなど、VR技術もどんどんと進化しています。さらに、視覚体験や身ぶり手ぶり、顔の表情など、アバターの操作によって現実に近いコミュニケーションを取ることができるようになってきました。

VRを使ったコンテンツやサービスのクオリティが向上したことが、メタバースが注目されているひとつの理由と考えられます。

新しいコミュニケーションとしての可能性

新型コロナウイルス感染症の影響により、リアルで開催するイベントが中止になったり、開催する際にも厳しい制限がかけられたりしました。また、テレワークが進んだことで、人々が外出する機会も急激に減少し、それに伴い進んだのが、コミュニケーション手段のデジタル化です。

コロナ禍以降、オンライン会議ツールやチャットツールを使う人が一気に増えましたが、メタバースもその延長線上にあるといえます。
メタバースであれば、現実に人が集まらない状態でイベントを開催することもできますし、ビジネス上でも簡単にコミュニケーションを増やすことができるため、新しいコミュニケーションの可能性が生まれたことで、注目されたと考えられます。

NFTとの親和性の高さ

ブロックチェーンを活用した「NFT」が実用化されてきたことも、メタバースが注目される理由の1つです。
NFTとは「非代替性トークン」のことで、デジタル上のデータを世界で唯一の本物と証明するための技術として用いられています。この技術のおかげでデジタルデータに唯一性を保証することができるようになったことで、メタバース内でもアイテムや土地などのデータをNFTとして売買することが可能になりました。

現在は、メタバースで入手したNFTをNFTマーケットプレイスで売買したり、NFTマーケットプレイスで入手したNFTをメタバース内で利用したり、売却したりすることも可能になっています。
こうした一連の関係性からも、NFTと連動するようにメタバースも注目されてきているわけです。

メタバースがもたらすこと

メタバースは様々な効果をもたらしてくれることが期待できます。

●仮想空間で様々な活動や体験ができる
●非現実的なことも体験もできる
●メタバースによってビジネスチャンスが広がる

仮想空間で様々な活動や体験ができる

メタバース内の仮想空間では、様々な活動や体験ができます。
例えば、ゲーム、イベントやライブへの参加、ショッピング、旅行、ビジネスなど。このような体験を、自宅にいながら仮想空間で行うことができるのです。実際に会ったり、現地に行ったりする感覚に近い体験が仮想空間内でできてしまうため、従来のオンラインツールよりもリアルに近い感覚を味わうことができます。

メタバースでは、全世界のユーザーとリアルタイムで同時に体験できたり、共感・共有できることも魅力のひとつではないでしょうか。

非現実的なことも体験もできる

メタバース内では、現実世界の物理法則を無視したような、非現実的な体験をすることも可能になります。
例えば、羽を生やして空を飛んだり、宇宙空間を浮遊できたり、行ってみたい時代にタイムスリップしたりなど、現実では不可能に近いことを体験することができるのです。

現実を超越した体験ができるところも、メタバースの魅力のひとつといえるでしょう。

メタバースによってビジネスチャンスが広がる

メタバース内では、NFT作品などの販売が可能なため、新たなビジネスチャンスを広げることができます。
例えば、ネット販売では基本的に販売員と会話をして商品を購入することはできませんが、メタバースでは実際の店舗で買い物をする感覚で、販売員と会話をすることも可能になります。より現実に近い感覚で買い物を楽しむことができるということです。

こうしたビジネスへの広がりは、クリエイターにとってもユーザー側にとっても素晴らしいことであると思います。

久原健司

久原健司

日本一背の高いITジャーナリスト/株式会社プロイノベーション代表取締役 IT企業を経営する傍ら、“日本一背の高いITジャーナリスト”として様々なwebメディアでの執筆や母校の東海大学で特別講師として、定期的に授業も行っている。 ITに関する講演を得意としており、受講者のITリテラシーに合わせて話す内容を変えることができ、企業に寄り添った講演が人気。