ChatGPTを使いこなす! AIと人間の共存戦略を「Dynabook Days 2024」で講演

2024.03.18
ChatGPTを使いこなす! AIと人間の共存戦略を「Dynabook Days 2024」で講演

世界初のノートパソコン「Dynabook」が発売されて35年。“進化”を続けるDynabookの春モデル「Dynabook R9」の発売を、Dynabook株式会社が2024年2月14日に発表した。

AIが多くの業務にかかわり、質の高いアウトプットを実現するなどAIがより身近になり、業務の生産性や作業効率の向上、さらには仕事や生活スタイルの変革をもたらすようになってきた。

そんなAIの一端を担い、快適な操作性を追求して身近なデバイスを、Dynabook社は「AI PC」と位置付けた。その先駆けとなる商品が、AI専用エンジンを内臓した高性能のモバイルノートPC「Dynabook R9」だ。

同日、東京・江東区有明の東京ファッションタウン(TFT)ビルで開かれた「Dynabook Days 2024 AIで未来を切り拓く新たなイノベーションのご提案 ~ Dynabook最新PCとAI活用ソリューション セミナー&展示会 ~」で、プロイノベーション代表取締役の久原健司が、「AIと人間の共存戦略 ビジネスにおける成功の鍵」をテーマに講演した。展示会のもようとともにレポートする。

AIは高性能の計算機!

「Dynabook Days 2024」は、今後のビジネスシーンにおけるAI活用術がテーマ。スペシャルセミナーと、Dynabook社のPCやさまざまなビジネスソリューションの展示、説明と「生成AIは企業の新規事業戦略をどう変えるか?」や「最新CPU 『インテル®Core™Ultra』で実現するAI PC」などをテーマとしたセミナーを用意して、ビジネス課題の具現化と解決方法、AIの活用についての情報を、2月14日、15日の2日間にわたり提供した。

その中で、プロイノベーションの久原健司社長が「AIと人間の共存」していくために、どのように取り組んでいけばよいのか――。その戦略をアドバイスした。

講演会ではまず「AIとはなにか」から、はじめた。

「みなさんに、『AIとは何でしょうか?』と聞くと、ほとんどの方が『人工知能ですよね』と答えます。人工知能は、みなさんの想像のどおりではありますが、人間のようにたくさんの情報から学び、そして考え、質問に答えたり、問題を解決したり、時には私たちがまだ思いつかないような新しいアイデアを生み出すこともあるんです」(久原健司)

「はじめにAIとはなにか?」(久原健司)

AIには、3つの特徴がある。

「一つ目は、すごく性能のいい計算機だということ。これはAIが計算機科学の研究分野の一つであることが理由です。みなさん、計算機はわかりますよね。『1+1=』と、数字と記号を入れると『2』と結果がでます。ちょっといい計算機になると、関数電卓があります。これは先ほどの『1+1=』と数字と記号以外に関数が入力できます。今回はAIをすごく性能のいい計算機と表現したのですが、これはChatGPTなどの生成AIをすでにさわったことあるという方であればイメージできると思いますが、日本語を入れれば、日本語が返ってくるということです。具体的には、『なぜ空が青いのか教えていただけますか?』と質問すると、『それはですね……』というふうに答えてくれます。このようにAIを、すごく性能のいい計算機なんだよという認識を持っていただきたい。AIが一つの便利なツールですよと、アップデートしていただきたいと思います。

続いて、AIには学習し続けるという特徴があります。わかりやすいの自動車です。AIが搭載されてない、ふつうの自動車は時間の経過により、徐々に劣化し、新車が出れば型落ちとして値段が安くなる傾向があります。一方、テスラがつくっているAI搭載の自動車というのは、無線によるソフトウェアのアップデートによって購入後も定期的にソフトウェアが更新され、機能が向上していきます。これは購入したタイミングより、使えば使うほど、どんどん性能が良くなり、価値が上がっていく可能性があるわけです。

そして、3つ目が個人の生活を豊かにするということ。今までのIT製品でも、十分にみなさんの生活は豊かになってきていますが、ポイントは『個人』にあります。例えば商品にペルソナが設定されており、20代の女性向け商品、30代の男性向け商品といったように、ある程度の購買層が設定されていることがあります。AIは利用者の情報を学習して、良いフィードバックを返すことができますから、『あなた』に特化していきます。そうすると利用者にとって、ピッタリな商品が提供できるので、満足度も上がることになります。まさに、お得意様となりパーソナライズされた経験を得ることができるのです」
久原は、そう説明する。

「AIは生活のかなり近くにまで迫っている」

「じつはAIの歴史は1956年。ダートマス会議でジョンマッカーシーさんが初めて使い生まれた言葉なんです」(久原)
AIは、かなり昔からあったのだ。

第一次AIブームは、スタートラインにネズミのおもちゃをおいて、手を放すとカタカタカタと動き出して、自動でゴールに行く「迷路」だった。これを見た人は「すごい!人工知能ってものすごいぞ」とびっくりして、世の中はワッと盛り上がりった。しかし、冷静に考えると、ネズミのおもちゃが迷路を自動でクリアするだけ。「そうなると、世の中は『なんだ…』と、一気に熱が冷めたのです」(久原)

第二次AIブームは1980年。「エキスパートシステム」の登場だ。 「実際にこの時に生まれた製品は、医者がいない地域でも正しく薬を飲むことができるシステム。まだ発展途上国では、医者の数が少なく、薬だけ山奥の村に送っても、何をどのくらい飲めばわからないので、正しく飲むことはできませんでした。ただ、この『エキスパートシステム』は、あなたは熱がありますか?とか。喉が痛いですか?とか。鼻水は出ますか?とか。ひどい下痢をしていますか? と症状を確認することで薬の種類や量がわかり、人々の命を救ったとのことです。医者の頭の中の情報を、すべて手で入力すれば良いのですが、これが非常に大変で、さすがに無理があると。これも、じつはブームが終わってしまいました」(久原)

そして、第3次AIブームではディープラーニングによって劇的に頭の良いAIを作成することができるようになった。

「AlphaGoが囲碁で人間に勝利することで、AIはとうとう人間を超えたと騒がれたんですね。現在、2024年。第3.5次なのか、第4次AIブームかは、よくわかりませんが、生成AIの登場したことで、AIは“冬の時代”をほぼ迎えることなく、また新たな局面を迎えたことになりました」(久原)

そうしたAIの進化は、ビジネスにおける応用例でも明らか。すでに多くのサービスに、AIが実装されていて、なかでも大手企業の製品・サービスは、アップデートしていく過程でAIが搭載されている。「すでにAIは生活に密着してきており、SF映画の世界ではないことに気づいてほしい」と、久原は話す。

周知のとおり、ChatGPTは自然に対話しながら文章を作成するのが得意。最近では画像生成やいろいろなことができるようになったが、ChatGPTが得意なことは、インターネット上にある大量のテキストを学習して、入力された文章に対して理解することができることだ。ChatGPTは適切な返答を生成し、自然な会話を行う能力を持っていて、これはChatGPTが以前に交わされた会話の文脈を「覚えている」ことで可能にしている。

つまり、ChatGPTは会話の流れの中で提供された情報を記憶しており、それを基にして後続の応答を生成することができる。「ChatGPTが“ちょうどいい、真ん中”の言葉を選択できるのは、学習したデータから確率に基づいて単語を選んでいるからです」(久原)。

「ChatGPTは会話の流れの中で提供された情報を記憶。それを基にして後続の応答を生成することができる」(久原)

久原は、こう続けた。
「ChatGPTは質問に対する回答が得意です。『空はなぜ青いんですか?』と聞くと、それに答えてくれます。Google検索に近い使い方ですね。次に、文章の要約が得意です。『子供に人気がでそうな絵本の話を作って』なんて言うと、タイトルやあらすじを作成してくれたりもします。

そういえば、2023年9月に伊藤園がリニューアル発売した『お〜いお茶 カテキン緑茶』のテレビCMに生成AIで作成したモデルを起用して話題になりました。画像もつくれます。テレビCMへのAIタレントの起用は日本で初めてです。『AIタレントはゴシップがないから安心だ』との意見もありますが、一方で否定的なコメントもあり、物議を醸しています。このように画像生成の領域でも、さまざまなサービスがすでにビジネスに活用されています。AIは生活のかなり近くまで浸透していて、いつの間にか共存しはじめていることを感じていただけましたでしょうか」

人間とAIの共存のために… より良いプロンプトのコツとは?

「人間とAIの共存」というテーマに、久原は
「多くの方が今後、AIと良い関係を構築する必要があると考えていらっしゃると思います。ただ、どうやって共存していけばよいのかよくわからないという方は少なくないと思います。ただ、少なくとも共存を拒んでしまうとあまり良くない結果が想定されるので、無理はしなくてもいいのですが、AIの大きな波にちょっとだけ身を委ねて、リスクを最小限にしていただけたらいいな、と思っています」
と話した。

ビジネスで AI を活用するメリットは 、「効率化とコスト削減」「意思決定のサポート」「競争力の強化」の3つ。【下の図参照】

このメリットを実現するため、ChatGPTを使いこなす、より良い結果を得るためのプロンプト(聞き方)のコツが6つある。

①指示を明確にする
「お話を作って」とChatGPTに頼むと、どのような話を求めているのかが不明確です。そこで、「300文字以内で、宇宙を舞台にした冒険の短編ストーリーを書いてください」と具体的に伝えることで、望む結果を得やすくなります。
②参考テキストを提供する
「環境問題についてのエッセイを書いて」と頼む際、読んだ記事やデータを示して、「この情報を基にしてエッセイを書いてください」とお願いすると、期待する内容のエッセイを書いてもらいやすくなります。情報を「”””」で囲むとChatGPTは、そのテキストを参照してくれます。
③タスクを分割する
「世界各国の伝統的な料理を調べて、健康的なものをリストアップして」という複雑なタスクは、まず「世界各国の伝統的な料理をリストアップしてください」という簡単なタスクに分割し、次に健康的なものを選んでください」と段階を踏むと良いでしょう。この方法で、より簡単にタスクを処理できます。
④「考える」時間を与える
ChatGPTに数学の問題を解かせる時、「17 x 28の答えは?」と急ぐのではなく、「17 x 28を計算する手順をステップ・バイ・ステップで教えてください」と頼むことで、AIが考えるプロセスを経て、より正確な答えを導き出せます。
⑤外部ツールを利用する
ChatGPTは文章作成に長けていますが、計算やプログラミング、画像や音楽の生成は外部のサービスを使うと良いでしょう。これにより、期待したアウトプットを得ることができます。
⑥いろいろ試してみる
最適な使い方は人それぞれ。さまざまな指示の出し方を試し、自分に合った方法を見つけましょう。

ビジネスや日々の暮らしの中で、生成AIを、ChatGPTを上手に使いこなしてほしい。

(久原健司)

髙橋 べん(たかはし・べん)

髙橋 べん(たかはし・べん)

株式会社 カブライブ!代表取締役/ライター 金融・経済、投資と企業動向、働き方に関連するジャンルの記事の企画、執筆・編集に従事。1990年代後半~2000年代の金融危機の時代には経済誌や週刊誌などで活動した。その後、ネットメディアのJ-CASTニュースで記者、経済・企業チャンネルのJ-CAST会社ウォッチで編集長を務めた。2023年8月、個人投資家の金融知識の向上とすそ野拡大、企業の広報・IR活動を支援するプラットフォーム「カブライブ!」を開設した。 主な共著に、「絵で見て入門 経済が楽しくなる本」(日本経済新聞社)や「デビットカード革命」(宝島新書)、「銀行の真実~現役行員が語った本当のウラ」(宝島社)、「銀行 2008年度版」(産学社)などがある。 ファイナンシャルプランナー、(一社)SDGs大学認定アドバイザー