「日本一背の高いITジャーナリスト」がDX総合EXPO・AI Worldを歩いて見た、“AI時代のブランディング”とは

2025.09.26
「日本一背の高いITジャーナリスト」がDX総合EXPO・AI Worldを歩いて見た、“AI時代のブランディング”とは

2025年7月23日、幕張メッセで開催された「DX総合EXPO 夏 東京/AI World」に足を運んだ。生成AIの進化とともに、業務改革や情報発信のあり方が大きく変わろうとしている今、会場には業界別AIソリューションから社内運用支援まで、実に多様な企業が出展していた。その中で特に印象的だったブースについて、プロイノベーション代表取締役社長の久原健司がレポートする。

AI検索で自分を“診断”してみた

デジタルマーケティングエージェンシーLANY(レイニー)のブース

私は今回、ITジャーナリストとしてだけでなく、「情報発信者のひとり」として、自分のブランディングや露出状況がAI検索にどう映るのかも検証してみたいと考えていた。そんな目的にぴったりだったのが、デジタルマーケティングエージェンシーLANY(レイニー)のブースだ。

同ブースでは、企業や個人のWebサイトがChatGPTなどのAI検索でどう表示されるかをその場でチェックできる「AI検索診断サービス」が提供されていた。半ば興味本位で、自社名「プロイノベーション」や自身の名前「久原健司」での診断を受けてみた。

結果は意外なものだった。たとえば「AI導入コンサルティング」などのビジネス寄りの検索ワードでは上位表示されなかったものの、「日本一背の高いIT」で検索すると1位に表示、「ITジャーナリスト」でも3番目に私の名前が登場したのだ。

「日本一背の高いITジャーナリスト」をAIに聞いてみた

これまで講演会やメディアで使ってきた「日本一背の高いITジャーナリスト」というフレーズ。正直なところ、ちょっとした話題づくりのつもりだったが、AIの世界ではしっかり“ラベリング”されていたようだ。偶然か、戦略かーーいずれにせよ、個人ブランディングがAIに届いていたことは興味深かった。

SEOとLLMOの時代へ

LANYによれば、これからの情報発信には「SEO(検索エンジン最適化)」だけでなく、「LLMO(Large Language Model Optimization=大規模言語モデル最適化)」の視点が必要になるという。つまり、ChatGPTやGeminiなどの生成AIが回答する際に引用されやすい構成・文章設計を意識しなければならないのだ。

同社のサービスはSEOをベースとしつつ、AIの要約やオーバービューに取り上げられやすい情報設計まで含めた“ハイブリッド最適化”を目指しているとのこと。これは個人にも企業にも共通する課題であり、今後のPR戦略において重要な示唆となる。

会場で見かけたAIによるリアルな課題解決策

LANYのようなAI時代の広報戦略に注目が集まる一方で、会場では他にも多彩なブースが現実的な課題解決に取り組んでいた。

パークシャテクノロジーのブース

・ヘルプデスクチャットボット
問い合わせ対応の効率化だけでなく、社内ナレッジ共有まで対応。人的コストの削減と対応品質の両立がテーマ。

・AI-OCR
帳票処理を支援し、業務システムとの自動連携も実現。人手をかけずに紙の情報を即データ化できる仕組みが紹介されていた。

・ゲーミフィケーション
営業研修や社内エンゲージメントを高めるためにAIと組み合わせた提案が多数。個別に最適化された学習環境の提供が可能になっている。

・Web3・ブロックチェーン領域
AIとの連携による信頼性向上や認証機能の拡張といったテーマが語られていた。

そのほか、シニアマーケティングやサイト翻訳なども、「人×AI」による細やかな対応が各分野で進んでいた。

AIは「見る者」になった

幕張メッセの東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会展示コーナー
幕張メッセの東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会展示コーナーにて

これまで、検索するのは「人間」だった。しかし今や検索し、選び、紹介する“検索者”がAIになりつつある。情報発信の根本が変わる時代といえるだろう。

自分たちの伝えたいことを、AIにどう理解してもらうか。そのために、どんな言葉を使い、どんな構造で発信するのか。この問いは、個人にも企業にも等しく突きつけられている。

会場を歩きながら、そしてAIに“自分自身”を見つめられながら、情報発信の未来と向き合った一日だった。背が高いおかげで見渡せる景色は広いが、本当に大切なのは「誰に、どう届いているか」ーーそんな当たり前のことを、改めて考えさせられた。

久原健司

久原健司

日本一背の高いITジャーナリスト/株式会社プロイノベーション代表取締役 IT企業を経営する傍ら、“日本一背の高いITジャーナリスト”として様々なwebメディアでの執筆や母校の東海大学で特別講師として、定期的に授業も行っている。 ITに関する講演を得意としており、受講者のITリテラシーに合わせて話す内容を変えることができ、企業に寄り添った講演が人気。