あなたはAIを信頼できますか? 世界に“遅れ” 77%が「信頼していない」「わからない」と回答

2024.02.11
あなたはAIを信頼できますか? 世界に“遅れ” 77%が「信頼していない」「わからない」と回答

コンサルティングファームのKPMGコンサルティング(東京都千代田区)が、AI(人工知能)に対する人々の信頼や認識、AIの運用と管理への期待などについてまとめたレポート「AIは信頼できるか ~AIへの社会的認識の変化に関するグローバル調査2023」を、2024年1月31日に発表した。

AIは、いまや仕事の進め方やサービスの提供方法を大きく変えようとしている。新たなメリットをもたらす一方、リスクや課題も指摘されており、AIのメリットをより享受するためには、AIがより信頼できるかたちで開発、利用されることが不可欠となっている。
調査では、AIへの信頼と受容について、欧米を中心とする世界17か国、1万7000人以上を対象に、AIがさらに受け入れられるための4つの要素について解説するとともに、日本の特徴について分析した。

61%がAIを信頼することに懸念を抱いている

調査によると、「AIの信頼と受容」について、61%にのぼる多くの人々が AIを信頼することに懸念を抱いている。AIに対する受容度は、67%の人が「低い」または「中程度」と回答。AIを信頼、需要できるかはAIアプリケーションに依存している。

人事分野でのAIの利用は最も信頼度が低く、受け入れられていないが、医療分野では最も信頼され、受け入れられていることがわかった。
また、「AIの潜在的なメリットとリスク」について、85%の人が「AIはさまざまなメリットをもたらす」と考えていることがわかった。人々はAIが持つ多くの潜在的なメリットを認識しているが、「メリットがリスクを上回る」と考えているのは半数にとどまる。

AIのリスクについては、各国とも同様の認識を持っており、84%が、「最も懸念しているのはサイバーセキュリティリスク」と回答している。
「誰にAIの開発と管理を任せるか」の問いでは、AIの開発、利用、管理について、76~82%が「国立大学や国立研究機関・防衛機関による AIの開発・利用・管理は信頼でき、公共にとって最善だ」と回答。大学や防衛組織が最も信頼を寄せられている。反対に、じつに3分の1が政府や営利組織を「信頼していない」と答えた。

40%の人が「自身の仕事はいずれAIに置き換わる」と回答

「責任あるAI」について、人々はAIが外部からの独立した監視によって規制されることを期待しており、「現状の規制では不十分だ」と考えている。調査では、75%の人は「保証の仕組みが整っていれば、AIをより積極的に信頼する」と考えており、71%がAIに対する規制を望んでいることがわかった。

 ChatGPTなど、職場でのAI導入が進むなか、多くの人々はAIが仕事や経営の意思決定をサポートすることに抵抗はないが、人間がコントロールし続けることを望んでいるという。「職場におけるAI」について、約半数が仕事で利用するAIを信頼したいと考えているが、人事分野でのAIの活用に抵抗があるとも答えていた。また、40%の人が「自身の仕事はいずれAIに置き換わる」と考えていることがわかった。

「AIに関する理解」について聞くと、半数が「AIについて十分に理解していない、または、いつ、どのように使われるのか理解していない」ことがわかった。45%の人が「ソーシャルメディアにAIが使われていることを知らない」という。
82%の人が「AIについてさらに学びたい」と思っていて、AIを理解している人ほど、AIを信頼し、より大きなメリットを感じる可能性が高くなるとしている。

AIの捉え方はさまざまで、若い世代や大卒者、管理職や、新興国の回答者は、他の国よりもAIを信頼し、受け入れ、肯定的に捉えている。

AIへの認識と理解 日本は世界で最も低い水準

次に、日本の特徴を分析。調査によると、日本のAIへの認識と理解は調査対象の17か国の中で最も低い水準にあることがわかった。信頼、受容、認識が不足し、多くの人がAIを学ぶことに関心を持っていないという。

AIを信頼したいと考えている人は、わずか23%。77%は「信頼したくない」「わからない」と答えた。56%が「AIを受け入れている」と回答。これはオランダに次いで2番目に低い結果だった。
否定的な感情(心配:55%、恐怖:52%)を示している人の割合が肯定的な感情(楽観:42%、興奮:40%)を上回り、73%が「AIに不安を感じている」ことがわかった。

AIの潜在的なメリットとリスクについて、75%の人が「AIにはさまざまなメリットをもたらす」と考えている。その一方で、68%が「さまざまなリスクを懸念している」と回答。調査対象国の中で、日本だけが「システム障害を最も大きな懸念事項」(81%)として挙げた。42%が「AIのメリットがリスクを上回る」と考えている。

公共の最大の利益のためにAIを開発、管理することに関して、「テクノロジー企業や国立大学、国際的な研究機関が、最も信頼できる」と考えられている。日本は韓国やシンガポール、BICS諸国と同様、テクノロジー企業に対する信頼度が高い。ほぼ半数の47%の人が「政府に対する信頼がない、あるいは低く」、43%が「営利組織を信頼していない」という。
52%の人が「AIが社会に与える影響は不確実で予測不可能」と感じており、これは調査対象国の中で 2 番目に低い数字。77%が「AIには規制が必要だ」と考えており、政府による規制(55%)よりも、産業界による規制(61%)を望む傾向がある。

「現在の規制や法律、保護措置でAIを安全に利用できる」と考えている人は、わずか13%で、調査対象国の中で最低。96%が「信頼できるAIの原則と実践はAIシステムへの信頼にとって重要だ」と考えている。

AIがさらに受け入れられるための「4つの要因」

職場でのAIについて、日本は31%の人が「仕事で利用するAIを信頼したい」と考えている。この数字は低いものの、「より広範に利用されるAIを信頼したい」と答えた割合よりも高い。
また、「AIに仕事が奪われるよりも雇用創出のほうが多い」という考えには、37%の人が反対しており、これはシンガポールやインド、中国を除く他の調査対象国よりも低い結果となった。日本では21%が「自身の仕事がいずれ AIに置き換わる」と考えており、これは調査対象国の中で最も低かった。
さらにAIに関する理解をみると、日本では75%の人が 「AIへの理解度が低い」と答えており、こちらも調査対象国の中で最も低かった。「AIについてさらに学びたい」と考えている日本人は55%で、これも調査対象国で最も低い数字だった。

日本では56%の人がAIを含む一般的なアプリケーションを使用しており、それとほぼ同じ割合の、53%の人がそれらのアプリケーションでAIが使用されていることを知っている、としている。

今回の調査から、日本のAIへの認識や理解が、世界からかなり遅れをとっていることがうかがえる。

KPMGコンサルティングは、「AIへの信頼に影響を与え、責任あるAIの利用を強化する要素として、4つの明確な道筋が特定できました。それは 『制度』『動機付け』『不確実性の低減』『知識』の観点です」と、指摘している。

・制度
AIを安全に利用するための保護措置・規制・法律、および AIの開発・利用・管理を行う政府機関や営利組織に対する信頼が重要。

・動機付け
AIの活用がもたらす潜在的なメリットを実証することで、AIへの信頼感を高める。

・不確実性の低減
AIリスクへの懸念に対処する必要がある。

・知識
AIの利用に対する人々の理解と、テクノロジーを利用する際の有効性を高める。

これらの重要かつ補完的な要素のうち、「制度」が信頼に最も強い影響を与え、次に動機付けが挙げられるという。

■関連資料
AIへの社会的認識の変化に関するグローバル調査2023(日本語版)