企業の“カスハラ”対策 「生成AI」の活用で二極化か?! PR TIMESが調査
生成AIによるカスタマーサポートの活用が「二極化」していることが、プレスリリース配信サービスのPR TIMES(東京都港区)が提供するカスタマーサポートツール「Tayori」(タヨリ)が実施した調査でわかった。
この調査は、問い合わせ対応業務に関する企業の意識や問い合わせ時の顧客の傾向を分析している。
問い合わせ顧客の75%がFAQへの不満で自己解決できない
調査によると、「あなたが購入した商品やサービスに問題が発生した際、自己解決できずお問い合わせに至った理由として当てはまるものを選んでください」との問いに、「ヘルプページやFAQはあったが回答がなかった(わかりにくかった)」と答えた人は39.1%で、最も多かった。
次いで、「ヘルプページやFAQはあったが回答がわかりにくかった」の24.5%だった。そもそも、「ヘルプページやFAQがなかった」と答えた人(11.3%)を合わせると、じつに74.7%の人が、自己解決できなかったことがわかった=グラフ1参照。
4人に3人がヘルプページやFAQの内容では不十分と感じて、問い合わせしていることから、ヘルプページやFAQをサイト上に設置することはもちろんのこと、FAQ内の探しやすさ、回答内容のわかりやすさがあってはじめて、問い合わせする人を自己解決に導くことができるというえそうだ。
その一方で、約25%にあたる人が、適切なヘルプページやFAQが設置されていても、問い合わせしていることがわかり、問い合わせの対応の品質向上も必要な要素となっていることがうかがえる。
また、問い合わせ窓口に期待することの第1位は「疑問や質問への素早い対応、迅速さ」で、39.5%にのぼった。次いで、「接客態度の良さ、対応の丁寧さ」が23.1%、第3位は「個人に合わせた対応、親密さ」で19.0%だった。問い合わせへの対応はスピードが大切ではあるものの、その質の高さも求められている=グラフ2参照。
お問い合わせフォームからの返信 約半数が「1時間以内」と回答
問い合わせ対応の満足度の傾向をみると、満足度が高いほど利用頻度が上がり、不満の残る対応の場合には利用頻度が下がることがわかった。これは、問い合わせ対応が利用頻度につながることを示しており、「期待したとおりの対応だった時」の場合、73.2%の人が「利用頻度が変わらなかった」と答えている。カスタマーサポートを通じてサービスの利用増に貢献するには、問い合わせした人の期待を超える対応が必要である、とみられる=グラフ3参照。
問い合わせ後の対応について、「どれくらいの時間で返信が返ってくることを想定していますか」と聞いたところ、全体でみると、「1時間以内」の返信を約半数が期待しているのに対し、「デリバリー」では80.7%が「1時間以内」の返信を求めていて、特にスピーディな対応が求められていることがわかった=グラフ4参照。
即時の対応を求めるものは「インフラ・公共」が「デリバリー」に次いで多く16.1%にのぼり、状況に応じて緊急性の高い問い合わせが発生し得ることがわかる。運営するサービスに応じて、求められる速度(期待時間)に差があることが顕著に現れた。
企業はカスタマーハラスメントへの取り組みに苦慮
企業では、カスタマーハラスメントへの取り組みに苦慮しているようだ。2022年に厚生労働省から対策企業マニュアルが作成されるなど、カスタマーハラスメントに対する企業の対策は、現場におけるトレーニングやエスカレーションといった事後の対応が上位を占める傾向にある。
調査によると、「カスタマーハラスメント(暴言、誹謗中傷)対策として、すでに導入もしくは作成済みのものをあげてください」(複数回答)との問いに、「オペレーターがハラスメントに直面した際、感情的な反応を避け、冷静に対処するトレーニングとガイドライン」と答えた人は29.8%で、最も多かった。次いで、「ハラスメントの発生を上司やマネージャーに適切に報告し、迅速な対応を促すプロセスと連絡先」が29.4%、「ハラスメント事例を詳細に記録し、日時、場所、内容などを文書化する手順とツール」をあげた人が24.6%で続いた=グラフ4参照。
ただ、ハラスメントの傾向、データ分析や再発防止策などの未然に防ぐための活動は一部にとどまっており、問い合わせ業務への取り組みは企業にとって課題となっている。
そうしたなか、カスタマーサポートにおける生成AIの利用方針を聞いたところ、「すでに利用している」または「使う予定がある」と答えた人は36.3%(「すでに使用しており、満足している」9.1%と「すでに使用しているが、満足していない」12.0%、「検討しており、今後使う予定がある」15.2%の合計)だった。「検討しており、結論は出ていない」が14.6%、「検討したが、使う予定はない」は9.1%。最も多かったのは、「考えていない、関心はない」の40.1%だった=グラフ5参照。
この結果、企業のカスタマーサポート対策での生成AIの活用が、二極化していることがわかった。調査したPR TIMESは「生成AIの活用は生産性の向上が期待され、早期に取り組むことができると問い合わせに対する顧客満足度の向上にも寄与する運営につなげられそう」とみている。
さらに、カスタマーサポートにおける生成AIを具体的に利用している領域(複数回答)を聞いたところ、「チャットボットによる対話型サポート」が30.8%で第1位となり、次いで「顧客データの分析と洞察の提供」が29.2%、「メール自動応答システム」の28.6%と続いた。ほぼ横並びといえるものの、「カスタマーサポートの自動化」や「SNSのカスタマーサポート」の項目はスコアが低く、業務をそのまま生成AIに置き換えるというよりサポート対応の支援に利用していることがわかった=グラフ6参照。
なお、調査は今回が2回目。
①20~59歳の男女で問い合わせの経験があるビジネスパーソン1万2000人
②カスタマーサポートあるいは問い合わせ対応業務に従事する309人(②の回答者を含む)を対象に、2024年1月9日~13日に実施した。
1月24日の発表。