営業職の生産性向上、解決策に「生成AI」 活用期待高まるも44%が「使っていない」

2024.04.04
営業職の生産性向上、解決策に「生成AI」 活用期待高まるも44%が「使っていない」

2023年3月にChatGPT-4がリリースされて以降、営業職でも「生成AI」のキーワードを耳にする機会が増え、その活用が注目されている。そうしたなか、企業の営業職における生成AIの導入状況をみると、44.0%の企業で「生成AIツールやサービスを導入・使用していない」ことがわかった。「全社的に使用が許可されていない、あるいは禁止されている」企業も28.1%にのぼった。

企業の営業活動を支援するセレブリックス(東京都江東区)セールスカンパニーが運営するセレブリックス営業総合研究所が「営業における生成AI活用の実態調査レポート Vol.1」で、明らかにした。

営業職の「生成AI」の活用は初期段階

従来の商文化から、営業職は勘・経験・根性の「3K」に委ねるステレオタイプの営業手法が根強く残っており、属人性に頼りがちな職種と考えられてきた。その一方で、国内の生産労働人口の減少に比例して、営業の労働人口が減っていくことが予測されるなか、営業職の求人倍率は増え続けている。
このことから、今後も営業職を必要としているにも関わらず、採用がうまくいかないというジレンマを抱える企業が増えることが推察される。

そうした中で注目されるのが、営業職の生産性向上。一人あたりの営業における”効率”と”品質”を高めることで、労働生産性を向上することが求められている。その一つの解決策として注目されているのが「生成AI」の活用。ところが、営業の組織や現場での生成AIの活用事例や成果事例の情報はまだ少ないのが現状という。

調査によると、「社内で生成AIは導入されていますか?」(n=1019)との問いに、44.0%を占める企業が「生成AIツールやサービスを導入・使用していない」と回答。次いで、「全社的に使用が許可されていない、あるいは禁止されている」と答えた企業が28.1%にのぼることがわかった 。
一方、企業の17.0%は「一部の人や部門での導入」と答え、「全社的に生成AIを導入している」企業は11.0%にとどまった。【図1参照】

図1 営業職における生成AIの活用は初期段階(セレブリックス営業総合研究所調べ)

また、「あなた個人が業務で生成AIを使う頻度を教えてください」(n=1019)と聞いたところ、個人では、「ほとんど使わない・使ったことがない」と答えた人が74.7%と圧倒的に多く、「月に数回」と答えた人は9.8%、「週に数回」は11.0%だった。
「毎日」使用しているという人は、わずか4.5%にとどまった。【図2参照】

図2 個人の生成AI使用頻度は企業での導入状況に左右される(セレブリックス営業総合研究所調べ)

導入のネックは?「使えるかが不明、不安、使いこなせない…」

調査では、生成AIの導入済の企業に所属している営業職を対象に「社内で生成AIが導入された目的で当てはまるものをすべて選んでください」(複数回答)と聞いたところ、導入目的で最も多かったのは「作業の生産性や作業効率を上げるため」で、152人がそう答えた。【図3参照】

セレブリックス営業総合研究所は、
「営業職の業務では、お客様と向き合いコミュニケーションを取る時間や、提案を行う時間が本来は重要。しかし、その裏側では商談の準備や資料の作成、レポートや議事録の作成、リストの作成、会議への参加などの業務が積み重なっており、お客様とコミュニケ―ションを取る純粋なセールスピュアタイムに時間を割けていないことも多い。
生成AIの導入は、ピュアタイム以外の作業や業務を半自動的にサポートし、迅速化することで、営業担当者がより重要度の高い業務に注力できる環境を提供していると考えられる」
としている。

次いで多かったのは、「データを分析し、より良い決定を下すため」(117人)だった。営業戦略の策定で、直観や経験則だけでなく、統計的なデータ分析が重要視されている実態を反映している。
こうした結果から、生成AIの導入目的は「業務効率化と意思決定支援」にあるといえる。効率化によって創出される時間的余裕は、戦略的な業務への注力を可能にし、また生成AIによるデータ分析は営業戦略の質を高める。
「この多面的なアプローチが、営業職における生成AI導入の背景にある動機であり、組織の競争力強化に寄与していると推察できる」(セレブリックス営業総合研究所)。

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セレブリックス営業総合研究所
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