DX化の現状を300人に聞いた! 65%が「重要性を感じながら実践できていない」

2023.10.29
DX化の現状を300人に聞いた! 65%が「重要性を感じながら実践できていない」

「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が少しずつ浸透しつつあるなか、経済産業省の「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~ 2018年」では、2025年までに課題を克服できなければ、毎年12兆円もの経済損失が生じるとされている。

そうした中で、仕事に関する悩みに向き合うWebメディア「Liberty Works」を運営するアントプロダクション(大阪市北区)が「DX」の認知度や実際の取り組みを調査した。2023年10月10日の発表。

IT技術の進歩は目覚ましく、コロナ禍を契機に業務内容や働き方を大きく変えた企業は少なくない。労働者目線のDX化・IT化に関する認識や、企業の課題解決はどの程度進んでいるのだろうか――。

「クラウド」の意味、説明できる?

 調査では、まず、さまざまなIT用語・ビジネス用語の認知度を聞いた。「意味を説明できる用語はどれですか?」との問いに、「クラウド」と答えた人は300人中232人にのぼり、最も多かった。

次いで、「IoT」が148人、「ビッグデータ」は145人と、過半数近くが「説明できる」と答えた。よく利用する技術や業務に関わる用語は認知されているといえそうだ。

その半面、「知っている用語はない」と答えた人は57人(19%)で、回答者の2割近くは「IT分野に詳しくない」「業務上ほとんど必要ない」人たちだと考えられる。【図表1参照】

図表1 意味を説明できる用語「クラウド」と答えた人は232人で最多(Liberty Works調べ)

【用語の意味】                                  
★クラウド(232人)                               
特定のソフトウェアを必要とせず、任意のタイミングでインターネットを通して利用できるサービス                                    ★IoT(148人)                                 
Internet of Things(モノのインターネット)の略。モノが相互に情報交換し、制御できる仕組み                                        ★ビッグデータ(145人)                             
顧客データや在庫データ、GPSの位置情報など、随時更新される膨大なデータ群
★AWS(51人)                                 
Amazonが提供するシェア率トップのクラウドサービスで、Amazon Web Servicesの略  
★デジタイゼーション(18人)                           
紙で管理していたリストをデータ化する、手作業から自動化に移行する「デジタル化」  
★デジタライゼーション(30人)                          
デジタル技術を活用してビジネスモデルを変え、新しい事業の形を作る「デジタル化」  
★リスキリング(94人)                             
新しい仕事、または今の仕事で必要なスキルを獲得する(させる)取り組み        
★リカレント教育(39人)                            
仕事に就いた後も生涯学び続け、就労と学習を繰り返す手法               

また、「デジタル化」や「IT化」「DX化」といった用語の違いをはっきり説明できる人は、意外と多くない。「DX化」の認知度を調査したところ、「内容を理解している」と答えた人は37人(12%)、「何となく分かる」という人102人(34%)となり、DXについて大まかに知っている人は139人、全体の約46%にとどまった。

DX化の言葉自体を「知らなかった」と答えた人も65人(21%)と、まだまだ一般には浸透しきっていない状況にあるといえる。【図表2参照】

図表2 「DX化」の浸透、まだまだ……(Liberty Works調べ)

【デジタル化/IT化/DX化の違い】                         
デジタル化:アナログデータをデジタルに変換して資料保存の手間や保管スペースを削減する。                                      
★例:既存の紙資料・帳簿をデータにして管理しやすくする、電子契約を導入してハンコを廃止                                       
IT化:IT(情報活用技術)によって業務・サービスのやり方を変え、業務を効率化する。
★例:人力だった作業を自動化する、紙の申請書を廃止する              
DX化:データやデジタル技術を活用して製品・サービスやビジネスモデルを変革し、競争力を上げる。                                   
★例:顧客用のアプリケーション開発、スタッフに代わるロボットの導入

DX化とは、デジタル技術を使ってビジネスモデルや企業の在り方そのものを変革していく動きを指す。簡単に言えば、デジタル化やIT化はテクノロジーによって企業の価値を高める「DX化」を目指すための手段といえる。

「DX化が重要だと考えている」人は85%だけど……

 調査によると、DX化の重要度と業務での実践について、「DXは重要だと思うか」「職場で実践できているか」質問したところ、「重要だが、実践していない」と答えた人が197人にのぼり、65%がDX化の重要性を感じながらも具体的な行動をとれていないことがわかった。

 「重要だ。実践している」と回答した人は60人(20%)。「重要」としている人が257人(85%)を占める一方で、職場でDX化を実践する行動をしている人は全体の2割にとどまっている。

「あまり重要ではない」と答えた人は36人、「重要ではない」は7人だった。合わせて43人、全体の14%が「重要ではない」としている。【図表3参照】

図表3 「DX化の必要性を感じながら65%が実践できていない」(Liberty Works調べ)

個人では「行動できていない」と答えた人が多数を占めているが、職場(企業)全体で見たDXへの意識はどうか――。「勤務先のDX化は進んでいますか」と聞いたところ、現時点ではDX化に取り組む予定がない職場に勤めている(「取り組んでいない」)人が最も多く、102人(34%)がそう答えた。次いで、「一部で進んでいる」の98人。「取り組む予定がある」は35人、「積極的に取り組んでいる」と答えた人は21人だった。 また、「わからない」と答えた人は44人。その内訳をみると、42人はDX化について「名前を聞いたことはある」「まったく知らなかった」と答えていた。企業の取り組みや関心の高さと、回答者の認識が比例関係にあることがうかがえる。【図表4参照】

図表4 勤務先のDX化は進んでいますか?(Liberty Works調べ)

さらに、職場でのDXに対する取り組みを聞いたところ、現状はIT化に取り組んでいる企業が多いようだ。実際の施策として最も多かったのは「アナログ業務のIT化」で300人中100人がそう答えた。次いで、「データの一元管理」が83人、「営業・会議をオンラインに移行」が82人、「ホームページの作成」の81人が続いた。

「業務フローの抜本的改善」(50人)や「DX化に対応できる社員の採用・育成」(32人)を進めている企業もあるが、回答者が働く職場の多くは、DX化の前段階になるIT化やデジタル化に取り組んでいるようで、多くの企業にとってはIT化の完了が課題といえそうだ。【図表5参照】

IT化やデジタル化を含め、職場全体で「特に対応していない」と答えた人は115人で、全体の38%にのぼった。企業の体質や業務内容によっては、IT化の推進も難しいのが現状とみられる。

図表5 多くの企業にとってはIT化の完了が課題(Liberty Works調べ)

DX人材、57%が「誰もいない」……

調査では、DXの専担部署や専任者の存在についても聞いたところ、170人(57%)が「DXを進める人はいない」と答えた。

「専任の部署がある」と答えた人は19人(6%)、「専任の担当者がいる」は26人(8%)と、DXを専門に扱う人材がいる企業は非常に少ないのがわかる。【図表6参照】

図表6 DX人材、57%が「誰もいない」……(Liberty Works調べ)

ところで、2020年から始まったコロナ禍でテレワークを導入した企業が少なくないことから、現状のテレワークの導入状況も聞いた。それによると、2023年1月にLiberty Worksが実施した調査では229人(76%)がコロナ禍によるテレワークを経験し、149人(49%)は調査時点でテレワークを継続していたことがわかった。

半年以上が経過した今回の調査では「導入済み・導入予定」が102人(34%)だった。「出社に切り替わりつつある」と答えた人は31人(10%)、「現在は出社」が25人(8%)と2割近い人がテレワークから出社に移行していることがうかがえる。テレワークを主体にする企業は減少傾向にあるとみられる。【図表7参照】

図表7 テレワークを導入する企業は減少傾向にある(Liberty Works調べ)

そうしたなか、働く人(労働者)の目線でみたテレワークの魅力にも、大きな変化が起こっている。今年1月時点では、テレワークのメリットとして300人中235人が 「感染症リスクの回避できる」ことを挙げていたが、今回の調査では「感染症予防」をメリットと考えているのは300人中45人で、最も多かったのは「働きやすい環境づくり」だった。115人がそう答え、約2.5倍の差がついた。

新型コロナウィルス感染症が「5類扱い」になり、日常的な対策が個人に委ねられるようになったことから、感染症予防だけを目的にテレワークを推進する企業は少数派といえる。テレワークのメリットは、「働きやすい環境づくり」や「コストの削減・効率化」(52人)を兼ねている企業が多いようだ。【図表8参照】

図表8 テレワークのメリットが変わってきている(Liberty Works調べ)

調査によると、担当者や専任の部署が少ない現状から見ても、「進めたほうがいいのは分かっているが、進められない」企業が多いことがうかがえる。経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」まであとわずか。働く人・企業の双方にとって、IT分野の知識やスキルの重要性は今後も高まっていくとみられる。

なお、調査は国内に住む男女を対象に、2023年8月31日~9月1日にインターネットで実施。有効回答数は、300人。

        

久原健司

久原健司

日本一背の高いITジャーナリスト/株式会社プロイノベーション代表取締役 IT企業を経営する傍ら、“日本一背の高いITジャーナリスト”として様々なwebメディアでの執筆や母校の東海大学で特別講師として、定期的に授業も行っている。 ITに関する講演を得意としており、受講者のITリテラシーに合わせて話す内容を変えることができ、企業に寄り添った講演が人気。