すぐに始められるDX 企業がDXを進めるために知っておいてほしいことDXにおける3つの課題

2023.09.21
DXにおける3つの課題

DXを始めたいけれど、何から始めていいかわからない。DXという言葉は聞くけれど、本当にやる必要があるのだろうか。そんなふうに思っている企業の方は少なくありません。そこで、を企業がDXを進めるために知っておいてほしいことをお伝えします。

前回、DXにおける3つの課題を紹介しましたが、改めて整理します。

3つの課題とは

1つ目は「DX人材」の不足です。
ところで、「DX人材」とは何でしょうか? 少し掘り下げると、実は5つの役割が出てきます。その5つの役割のうち、本当に不足しているのは、実はたった1つで、残り4つはどうにかなっているはずなのです。その1つの役割も、DXを始める最初のほう、本当に業務の効率化やITツールを入れるといった段階では、DX人材は正直必要ありません。

2つ目の「やり方がわからない」
学生の時の足し算引き算のように習っていればできますが、DXは、ほとんどの企業が習ったことがないので、できないのは当たり前です。「守りのDX」、つまり生産性向上に関するDXに関しては、次回の記事で、実際のやり方をお伝えします。

最後は「お金がない」です。
実はDXは、それほどお金をかけなくてもできるのですが、うまく伝わっていないようです。むしろ無料でもできます。こちらも次回の記事で、その方法を紹介します。

DX人材に必要な5つの役割

今回の記事では、1つ目の課題である「DX人材」の不足を解決するための方法をお話します。まずDX人材が行う5つの役割ですが、ITアドバイザリー企業のガートナージャパンは、DX人材には次の5つの役割が求められると提言しています。

1. ビジネス系プロデューサー (ビジネス・アーキテクト)
DXによるビジネス・ゴールを定義し、新たなビジネス・モデルを考えたり、DXに関する企画を考えたりする役割を担う。経営層や社内外の意思決定者とのビジネス面でのコミュニケーションにも責任を持つ。

2. テクノロジ系プロデューサー (テクノロジ・アーキテクト)
ビジネス・ゴールの達成に向けた最適なデジタル・テクノロジの特定やテクノロジの適用によるシステム面の影響の分析、予測などを担う。経営層や社内外のエコシステムのパートナーに対する技術面のコミュニケーションにも責任を持つ。

3. テクノロジスト (エンジニア)
現場で実際にテクノロジを活用する役割を担う。自動化、データ・サイエンス、モノのインターネット (IoT)、人工知能 (AI) などの新興領域に注目しがちだが、確実にDXを推進していくためには、通信ネットワーク、IT基盤、セキュリティ、クラウドなどの既存の領域の役割も重要である。テクノロジストもまた、全従業員が対象となる。

4. デザイナー
ソリューション、サービス、アプリケーションのユーザー・エクスペリエンス (UX) をデザインする。UX面のコミュニケーション、UXとデザインに関する知識の社内普及に向けた教育なども行う。

5. チェンジ・リーダー
デジタル・テクノロジの導入に伴う働き方 (業務、意識など) のシフトの主導、変革の目的やゴールの整理、変革のコミュニケーション計画の作成、関係者全員を巻き込んだ意識と行動変容に向けた施策の計画/展開などを担う。

以上の5つの役割を、もう少しわかりやすく紹介していきましょう。

5つの役割を理解する

まず、ビジネス系プロデューサーとは、現状の問題を発見する人です。
企業の内部から見ていると、給料ももらっているし、来年会社がつぶれるわけでもないし、特に問題がないと思ってしまいます。しかし、10年後DXをやっていれば、なんとなく良くなるとはわかっているはずです。その時、周りの企業がDXで先を進んでいたとしたら、何もやっていなかった自社との差はかなりのものになってしまう可能性があります。
ビジネス系プロデューサーは現状の問題を発見する人。その意味で、若い人や外部から入ってきた人、転職してきた人が向いているでしょう。

2番目のテクノロジー系プロデューサー。テクノロジーと聞くとITに詳しい人かと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
現状の問題を解決できる課題にする人、つまり問題を見つけた時に、たとえばキントーンを導入してみよう、さまざまなツールがある中で、このツールを入れれば解決できるのではないか、と判断できる人です。最初はITがわからなくても、いろいろなツールの話を聞いていくとだいたいわかってきますので、その程度で問題ありません。
もちろん上位レベルになったらシステム面の影響なども見なければいけなくなってきますが、最初はそれほど難しく考えなくても大丈夫です。

3番目はテクノロジスト。課題を解決するサービスや商品を作る人です。これがなかなかいません。
日本で「ITエンジニア」といわれる人は、ほとんど大企業もしくはIT企業に所属しています。ですから、エンジニアが不足しているということは認めますが、テクノロジストは、特にツールを選んで使うという最初の段階では必要ありません。
ただ、商品やサービスに対して何か画期的なAIを入れるなど、DX2.0や攻めのDXといわれる段階に関わってくると必要になってきます。

4番目はデザイナー。新しい体験を伝える人、商品やサービスを最初にみんなに渡す人です。
仮に会計ソフトや給料計算ソフトを導入したとしても、いきなり動くかというとそうではなくて、セッティングをしたり、社員情報のデータを入れたり、マニュアルを読んで、いろいろできるようになっていくものです。
ですから、こういうことをやると素晴らしいよ、とみんなに伝える人、導入当初に活躍する人です。

最後はチェンジリーダー。新しい体験を習慣化させる人です。
ダイエットでも何でも最初はやってみるものの、すぐに飽きてやらなくなってしまう。なぜやらなくなるかというと、ある業務がそのツールではできないとなった場合、昔のやり方のほうが便利じゃないかという話になって、ずるずると本来の業務をやらなくなってしまうからです。
ツールに合わせてやり方を変えないといけないのですが、結局やらなくなってしまう。非常にもったいないのですが、実はここが中小企業のDXが進まない理由になっています。
始められないのではなくて、進まないのです。

以上、DXの3つの課題とDX人材の5つの役割について紹介しました。
次回は、残りの2つの課題を解決するための方法である「守りのDX」の具体的な進め方について解説します。

■関連サイト
ガートナージャパン株式会社

久原健司

久原健司

日本一背の高いITジャーナリスト/株式会社プロイノベーション代表取締役 IT企業を経営する傍ら、“日本一背の高いITジャーナリスト”として様々なwebメディアでの執筆や母校の東海大学で特別講師として、定期的に授業も行っている。 ITに関する講演を得意としており、受講者のITリテラシーに合わせて話す内容を変えることができ、企業に寄り添った講演が人気。