すぐに始められるDX 企業がDXを進めるために知っておいてほしいこと攻めのDXで売り上げを上げる方法

2024.01.23
攻めのDXで売り上げを上げる方法

これまで、DXの現状や課題の解決法、生産性向上のための「守りのDX」について説明してきました。今回は、「攻めのDX」で売り上げを上げる方法を紹介します。

攻めのDX

経済産業省が「DX推進ガイドライン」というものを出しています。そこに書いてあるところで重要なのが、「競争上の優位性を確立すること」。要は守りのDXだけではなくて、攻めのDXをやって売り上げを上げよう、日本のGDPを良くしようと経産省が言っているのです。

デジタルガバナンス・コード2.0(旧DX推進ガイドライン)

ですから、守りのDXを1回やったらおしまいではなく、そこからどんどん続けていって、攻めのDXまで続けてやらなければいけない。では、具体的に攻めのDXは何ができていればいいのでしょうか?

最近流行りの5G、AI、IoTといった言葉があります。コア業務に、この3つのIT技術を導入するのです。IoTでデータを収集して、それをクラウドに上げてAIが解析をして、さらによい形で、業務を回していけるというのが理想的といえるでしょう。

しかし、経済産業省の「DXレポート2.2」(2022年)には、「個社単独でのDXが困難な状況にある」とあります。

攻めのDXが必要なのはわかってはいるけども、実際にやってみると結構大変で、お金もかかるし、失敗する可能性もあります。

では、その困難な状況を乗り越えるためには、何をしたらいいのでしょうか?

まず専門性を持った人材を育成したり採用したりしなければいけません。第2回の記事において、「DX人材に必要な5つの役割」の3番目で紹介した「テクノロジスト」という人が、そろそろ必要になってきます。しかし、その前に、今いる社員全員がDXに関する基礎的な知識や心構えを身につけないと、結構これがまずいんです。何がまずいかというと、いきなり外国人が入ってきたような形で、知らない言葉でまくしたてられたら、既存の社員は反発するしかなくなってしまいます。ですから事前にDXの知識や心構えを身につけた上で、専門性を持ったテクノロジストを迎え入れたり採用したり育てたりしなければいけないのです。

では、それはどのように進めればいいのでしょうか?

経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、デジタル人材の育成を推進するため、デジタル知識・能力を身につけるための実践的な学びの場として、ポータルサイト「マナビDX」を開設しています。

「マナビDX」

まずはDXについて知りたい。もっと専門的にデータを解析したい。そうした人は、このマナビDX利用するといいでしょう。キャリアアップのためにいろいろ身につけたいという人や、企業の研修にも活用したいという人にも便利だと思います。

経営者の方には、「人材開発支援助成金」という制度があります。こうしたものを利用すると、あまりお金をかけずにDX研修を行うことができます。

そんなDXの研修の中にも最近話題のチャットGPTを活用して最強のビジネスパートナーを手に入れようといった内容もあります。

ここで、チャットGPTについても少しだけ紹介します。チャットGPTとは何かというと、インターネット上にあるテキストデータやサイトの情報を集めて、たとえば私が「明日は雨だ。その後に何と言うでしょうか」と尋ねると、次に来る確率の高い言葉を選択することができます。特徴としては、自然な会話ができます。「空がなぜ青いの」という質問に答えたり、「お礼のメールを作成して」「以下の文章を要約してほしい」「わかりやすく説明してほしい」「問題があれば修正してほしい」といった要望に応えることができます。

アンケートを取ると、約1/2がチャットGPTに興味ある、または知っているという回答です。まだ触ったことのない方もいらっしゃるので、実際に少し使ってみましょう。

「なぜ空は青いの?」と入れてみると、こんな感じで出てきます。

空が青いのは、太陽からの光が大気中に散乱されるためです。大気中には酸素や窒素などの分子や微粒子が浮遊しており、これらの粒子が光を散乱させます。この散乱には波長に依存性があり、波長の短い青い光が他の色よりも強く散乱されます。そのため、私たちが地上から見上げた空は青く見えるのです。

この現象はレイリー散乱として知られており、夕焼け時には太陽が地平線に近づくため、青色成分が散乱されて減少し、空は赤やオレンジ色に見えます。したがって、時間帯や気象条件によって空の色が変わるのです。

この情報は、大阪大学の研究資料、科学なぜなぜ110番の解説、AI研究所の記事、TG内の解説、講談社コクレコの情報、およびニコンのキッズアイランドから得られました。

このように説明されて、皆さんはわかるかもしれませんが、子どもにこんな説明はしないでしょう。難しすぎます。そうすると、子どもたちには何を言うか。

「なぜ空は青いの? 中学生でもわかるように教えて」と続けて会話をするわけです。

そうすると、空が青く見える理由をもっと簡単に説明してくれます。こんな感じです。

この現象を中学生にわかりやすく説明するには、太陽光が虹のように分光されていることを伝え、青い光が他の色よりも多く散乱されることを示す実験や視覚的な資料を使うと良いでしょう。これにより、中学生でも空が青い理由を理解しやすくなります。

チャットGPTはこのようにインターネットで検索して、例えば市役所のような難しい文章も、コピーして、「これを中学生でわかるように教えて」と入れると、わかりやすくしてくれます。法律でも何でもいいですが、ちょっとわからない、わかりづらい、なんとなくわかるけれど腑に落ちないようなことも、会話をすることで教えてくれるのです。

まずは、このチャットGPTを取り入れてみるのもいいでしょう。これからは様々なサービスの中にも生成AIといわれるものが入ってくる可能性もあります。どんどん活用してみてください。

DXはITで生活を良くすること。DXに対して、あまり難しく考えてほしくないという思いがあります。そこで重要なのは浸透したか、していないか、要はツールが使えているか使えていないか。DXはITで生活を良くすることですが、それを当たり前のように浸透させることが重要だということを覚えていてほしいです。

企業の規模にかかわらず成果は出ます。たとえば社員5人ぐらい平均年齢50歳ぐらいの中小企業でもやっているので、うちには関係ないではなく、ちょっとやってみてください。日本は本当に100年企業、200年企業が世界でも多いので、あまり失敗したくないという思いはあると思います。であれば、まずは守りのDXから取り組んで、生産性を上げてみるのはいかがでしょうか。

もちろん攻めのDXも含めて、最後までやりきるのがDXだという方もいらっしゃいます。僕もそう思います。ただ、いきなり攻めのDXやってしまうと怪我をする可能性があるので、DXの教育をしながら挑戦し続けていただければと思います。

久原健司

久原健司

日本一背の高いITジャーナリスト/株式会社プロイノベーション代表取締役 IT企業を経営する傍ら、“日本一背の高いITジャーナリスト”として様々なwebメディアでの執筆や母校の東海大学で特別講師として、定期的に授業も行っている。 ITに関する講演を得意としており、受講者のITリテラシーに合わせて話す内容を変えることができ、企業に寄り添った講演が人気。